退去トラブルの1つに原状回復の責任の所在というものがあります。
これは賃貸していた部屋の室内についている傷や汚れの原状回復義務を貸主・借主のどちらが負うのかという問題で、どの時点で傷や汚れがついたのかが重要になってきます。
部屋を借りる前からあった傷や汚れは借りた側が原状回復義務を負うことはないですが、入居中の不注意や故意でついた傷や汚れの原状回復義務は借りた側が負うことになります。
この「借りる前からあった汚れや傷なのか」を証明するものとして重要なのが入居前点検というものです。
- 退去時に大家さんとモメたくない
- 退去トラブルを避ける方法を知りたい
- 原状回復の責任の所在をはっきりさせておきたい
- 入居前点検の注意点を知りたい
上記のようなお悩みが一つでも当てはまる方に役立つ内容となっていますのでぜひ最後まで読んでみてください。
本記事を読むメリット
- 無駄な退去トラブルを避けることができる
- 不当な原状回復の要求を拒否できるようになる
- 入居前点検で失敗しなくなる
退去時の原状回復トラブルは誰にでも起こります。
入居前の状況なんて大家さんも正確に覚えていませんし、入居中にうっかりつけてしまった傷や汚れを借りた側もいちいち覚えていません。
そんな原状回復トラブルを回避するための準備は入居する前にすでに取り掛かっておかなければなりません。
何年後に退去することになるかわかりませんが、面倒なトラブルに巻き込まれないためにも今から備えていきましょう。
入居前にするべき入居前点検とは?
入居前点検とはその言葉の通り、新居に入居する前に室内の故障や傷がある場所がないかを確認する作業のことです。
この点検作業は室内に荷物を運び込む前にしないと意味がありません。
というのも、引っ越し作業が終わって荷物も全て運び込んだ後に室内の床や壁に傷を見つけてしまった場合、それが鍵を受け取った時点で既にあった傷なのか、それとも引っ越し作業の際についた傷なのかが判断できないからです。
入居前点検は必ず室内が空っぽの状態で行いましょう!
入居前点検をしないことで発生する3つのリスク
入居前に入居点検を実施せずに『どの状態で借りたのか』という点をはっきりさせておかないと退去時に次にあげるような問題が発生するリスクがあります。
- 引っ越し業者がつけた傷の責任をとってもらえない
- 入居前からあった傷や汚れの原状回復費用を請求される
- お互いに証拠がないためトラブル解決に時間がかかる
1、引っ越し業者がつけた傷の責任をとってもらえない
引っ越し業者は引っ越しのプロですが、アルバイトの作業員も多いため運んでもらう荷物や新居の壁や床に傷をつけられてしまうこともあります。
そんなときに素直に失敗を謝罪して補償してもらえるのであればいいですが、残念ながら誤魔化してシレッと帰ろうとする作業員もいます。
こちらサイドから
「こんなところに傷なんてなかったですよね?」
と主張したとしても
「その傷は作業中についたものではなく元々あったものです」
と言われてしまえば証拠もなしにそれ以上の追求は難しくなります。
「荷物を運び込む前にはこんな傷はなかった!」
と確信を持って主張できるようにするためにも目立つ傷等が室内に元々ついていないかどうかの確認を引っ越し前には済ませておかなければいけません。
鍵をもらってから初めて部屋に入るのが引っ越し業者と一緒なんて状況では、万が一の時に有耶無耶にされかねないので注意が必要です。
2、入居前からあった傷や汚れの原状回復費用を請求される
入居した時点で室内にどのような傷や汚れがどの程度あったのかをチェックしておかないと、前の入居者がつけた傷や汚れの原状回復費用まで請求される可能性があります。
一般的に大家さんはリフォーム工事が完了すれば全て綺麗になっていると思っていて、細かい傷や汚れには気づいていないことも多いです。
リフォーム工事にかかる費用をケチって中途半端な仕上げをしていたとしても退去時には覚えておらず、
「そんな汚れはなかった」
「綺麗にリフォームをして貸した」
と平気で言ってきます。
入居時にいい大家さんだと思っても、退去時にもいい大家さんでいてくれるわけではないということを覚えておきましょう。
3、お互いに証拠がないためトラブル解決に時間がかかる
入居から数年経ってしまうと入居当時の部屋の状況なんてわかりませんし、入居時の細かい状況を部屋ごとに残している大家さんなんてほぼいません。
退去する時になってお互いの主張が食い違うことに気づくわけですが、お互いに証拠がないままだとなかなか解決せず、最悪どちらかが折れるしかない状況になってしまいます。
入居中はすごく住みやすかったとしても、退去トラブルが起こってしまえばそれまでの良い思い出が吹っ飛んでしまうぐらいのイライラとモヤモヤを残すことになります。
手間はかかってしまいますが退去トラブルを避けるためにも絶対に入居前点検はしておくべきです。
入居前点検のやり方と主なチェック項目
入居前点検では床や壁についた傷や汚れ、ドア・収納扉の建て付けの悪い箇所や変色、設備の不具合などについてできるだけ詳細に書き出していかないといけません。
荷物を運び込む前には次の12項目を必ずチェックしておきましょう。
荷物を運び込む前の12のチェック項目
- 床に傷や変色、凹みはないか
- 壁紙が破れている、汚れている、浮いているところはないか
- ドアや収納扉に傷や変色はないか
- 全てのドアや窓がスムーズに開閉できるか
- 障子や襖に汚れや破れがないか
- キッチンに汚れや変色、傷はないか
- 洗面台に汚れや変色、傷はないか
- 浴室に汚れや変色、傷はないか
- 窓ガラスに傷やヒビ割れがないか
- 網戸が破れていないか
- 雨戸の鍵がちゃんと閉められるか
- 各設備(エアコン・トイレの便座・トイレットペーパーホルダー・バルコニーの物干し等)がしっかり固定されているか
点検時には全ての蛇口から水を流して、全ての照明をつけて、全てのエアコンをつけてみて、不具合があるようならすぐに大家さんや管理会社へ連絡して修理してもらいましょう。
気付いた時に早めに連絡しておかないと
「使い方が悪かったんじゃないの?」
なんて言われかねませんので要注意です。
入居前点検をする際に注意する4つのこと
入居前点検を行うのは『部屋をどのような状態で借りたのか』という証拠を残しておくためです。
入居前点検をする際には次の4つに注意しておくことが大切です。
- 荷物を運び込む前に部屋の状況をチェックする
- 厳しめにチェックする
- 点検表を大家さんに渡す際に必ずコピーをとっておく
- 写真を撮っておく場合には必ず日付を入れる
1、荷物を運び込む前に部屋の状況をチェックする
入居前点検は必ず荷物を運び入れる前に済ませましょう。
荷物を運び込んだ後だと冷蔵庫やタンスの後ろの隠れてしまったところが確認できませんし、荷物を運び込んだ時についた傷や汚れだと言われてしまう可能性もあります。
2、厳しめにチェックする
室内をチェックしていると小さい傷や汚れは意外と出てきます。
それらを「こんなことまで書いておかなくてもいいか」と甘めに判断していると数年後の退去時に後悔することになります。
せっかく入居前点検をしたのに書き出していなかったために疑われるなんてもったいない話です。
気づいたところは全て書き出すつもりでやっていきましょう。
3、点検表を大家さんに渡す際に必ずコピーをとっておく
入居前点検をして書き出した点検表を大家さんや管理会社に提出する前に必ずコピーをとっておきましょう。
賃貸借契約書すら失くしてしまう大家さんもいますし、管理会社が途中で変更になって書類の引き継ぎができていないなんてこともあります。
入居当時の証拠として退去立会いの時に見せられるように大切に保管しておきましょう。
4、写真を撮っておく場合には必ず日付を入れる
文字で残しておくことも大切ですが写真を撮っておくというのも有効です。
その際には必ず日付が入る設定にして撮影しておきましょう。
特に大きい傷や目立つ汚れ、多くの傷が残っているような箇所はできるだけ写真を撮っておくことがオススメです。
写真についても印刷したものや枚数が多い場合にはデータを点検表と一緒に大家さんや管理会社に渡してお互いで保管しておくことが大切です。
まとめ:自分の身は自分で守らなければならない
大家さんもいい人ばかりではありません。
当然契約前は入居してもらうためにいい顔をしますが、部屋を出て行く人にまで気を配ってくれません。
引っ越し前は荷造りや役所手続きなどで忙しくて入居前点検なんてやってられないと思うかもしれませんが、数年後の自分を守るためにも『どういう状態で部屋を借りたのか』という証拠を残しておくことは必須です。
新しい生活もある中ですでに退去した部屋の退去トラブルで神経を削られるなんて無駄でしかありません。
避けられるトラブルは避けて通りましょう。
もし仮に入居前点検を知らずに、
- すでに荷物を運び込んでしまった
- 住み始めてしまっている
という場合であっても、入居時からあった傷や汚れを書き出して点検表を大家さんへ提出しておくことは大切です。
「すでに入居中だから」と諦めてしまわず、自分を守るために行動をしましょう!
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