新築の家を建てたいと思って土地を探し始めたんだけど、希望しているエリアで相場の2分の1程度の掘り出し物の土地を不動産屋が見つけてくれてね。
不動産のことはよく分からないけど不動産屋の人も「絶対オススメ」って言ってたし、他の人に取られたくないから今日は申し込みに行く予定なんだ。
お〜!たしかに2分の1の値段なら掘り出し物だね!
ただ、飛びついてしまうのは危険だよ。
その土地の詳しい説明は聞いた?
土地や建物を購入するとなると一生のうちに一回あるかないかのビッグイベントだから、その土地や建物がどんなものなのかをしっかり理解したうえで決断しないと後悔してしまうよ。
土地探しをする際には値段だけでなく、他にも注意すべきポイントがあります。
具体的にどんなところに注意しないといけないのかを見ていきましょう。
「安い=良い土地」ではない
「安売り」という言葉には、聞くだけでお得だと感じてしまう魅力がありますが、それは値段が安くなっている物に一定の品質が確保されているという前提があってこそです。
不動産は全てが一点物で、1つ1つ特徴や規制が異なるものなので、安ければいいというものではありません。
周辺の相場よりも安く売られているのであれば、そこには必ず理由があります。
それが法律の規制によるものなのか、現在の所有者の意向によるものなのか、隣人トラブルによるものなのかはわかりませんが、「安い=良い土地」というわけではないので決して飛びついてはいけません。
重要なのは安い理由(デメリット)を理解したうえで「買う!」という決断ができるかどうかです。
安くても買ってはいけない土地
売られている土地の中には、よく説明を聞かないままに手を出してしまうと後悔してしまう土地というものもあります。
代表的なのは次の6つです。
- 境界標がない
- 道路と接していない
- 道路と接している距離が短い
- 接している道路の幅が4m以下しかない
- 給排水管が他人地を跨いでいる
- 個人所有の水道管から水道を引き込んでいる
もし購入を予定している土地がこれらに当てはまるのであれば、お金を支払ってしまう前にデメリットについての内容と将来予測されるトラブルについての解決策について納得できるまで打ち合わせしておくべきです。
境界標がない
一般に売られている土地の中には敷地境界が不明瞭のままに売り出されているものが多くあります。
現状有姿と言えば聞こえはいいですが、要は見たまま、そのままの状態で売っているもので、売主側では特に手を加えませんというものです。
土地なんだから見たままの状態で問題ないよと思ってしまうかもしれませんが、敷地の境界はトラブルに発展しやすく、巻き込まれてしまうとかなり面倒です。
売主自身が境界を正確に把握していないなんて場合は特に注意が必要!
どこからどこまでが売買対象かをわかっていないのに売りに出しているということですからね。
仮に売主自身が境界を正確に把握しているとして現地で説明をしてくれたとしても、隣地の所有者とは認識が違っているなんてこともよくあります。
- 境界ブロックのセンターが境界なのか
- 境界ブロック自体が相手側なのか
- 境界ブロック自体がコチラ側なのか
購入してからコチラ側で隣地所有者と境界立ち会いをするとなると、以前から所有している相手方がどうしても有利になりがちです。
隣地所有者と立ち会いをするのであれば、お金を支払ってしまう前に売主側で済ませてもらいましましょう。
売主が口頭で「ココが境界です」と言ったとしても、境界標がなければ購入後に隣地所有者から全く違う主張が出てくる可能性があります。
将来的な境界トラブルを避けるためにも売主と隣地所有者で立ち会いをしてもらったうえで土地家屋調査士に境界標を設置してもらうのがベストです。
道路と接していない
ここで言う「道路と接していない」には2つの意味があります。
- 物理的に道路と接していない
- 建築基準法上の道路に接していない
1の物理的に道路と接していない場合には見て分かりますが、2の建築基準法上の道路に接していない場合には現地を見るだけでは判断がつきません。
建築基準法上の道路に接していない場合に何が問題になるかというと、土地上に建物を建築するには幅4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接していないといけないというルールがあるので、その条件を満たせていない土地は建物の建てられない土地ということになります。
具体的に建築基準法上の道路とは建築基準法42条1項1〜5号、42条2項に定められた道路であって、調べるには市役所や県庁で対象道路が建築基準法上の道路に該当するかを確認する必要があります。
たとえ見た目は幅4m以上の道路の形状をしていたとしても、実際にはただの通路扱いで建築基準法上の道路に該当していない場合には接道要件を満たさないとして建築が認められません。
また、土地と道路の間に細い他人地が存在していて実質道路に接していないような土地も存在します。
これは法務局で公図という図面を取得すれば確認できます。
道路と接している距離が短い
土地上に建物を建築するには幅4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接していないといけないというルールがあるので、道路と接している距離が極端に短く2mに満たない場合には建築が認められません。
これは現況をメジャーで測って2mあるから大丈夫というものではなく、自分の敷地として利用できる通路幅が2mあるかどうかが重要になるので、隣地との敷地境界が不明瞭な場合には必ず売主側で隣地所有者との立ち会いを済ませて境界を明確にしてもらいましょう。
古くからある通路などでは他人地や行政管理の里道(りどう)を取り込む形で舗装してしまっていることもよくありますので現地を見ただけで判断してしまうのは非常に危険です。
こちらも法務局で地積測量図という図面を取得すれば確認することができます。
接している道路の幅が4m以下しかない
接している道路の幅が4m以下で建築基準法42条2項道路に指定されている場合にはセットバック(道路中心から2mのラインまで敷地を後退すること)を求められるので、実際の面積よりも建築に使える有効面積が小さくなってしまいます。
接している道路幅が狭い場合には
- セットバックは必要なのか
- どこまで後退しないといけないのか
をよく確認しておかないと後々トラブルが起こる可能性もあります。
たとえば、購入しようとしている土地に接している道路幅が2mしかない場合には、道路の中心から2mラインまでの後退(敷地を1m持ち出し)することになります。
給排水管が他人地を跨いでいる
購入予定の土地から給排水管が遠い場合、やむなく他人地を跨ぐ形で敷地へ引き込みをしていることがあります。
購入予定の土地のために他人地の一部を使わせてもらっている立場になるので、余計なトラブルを起こすわけにもいかず将来にわたってかなり気を使います。
こういった土地の場合には
- 土地の掘削や配管の埋設に関して地役権(A土地のためにB土地の一部の利用を許可するという権利)が設定されているか
- 地役権がない場合には後々「地中の配管を撤去しろ」と言われないための対策はあるのか
ということが重要になります。
使わせてもらっている他人地の所有者が相続や売買で変わった際に情報が引き継がれていないこともありますので、配管が他人地を跨いでいることについて書面による同意をもらえていない場合には将来的にトラブルに発展する可能性が高くなります。
個人所有の水道管から水道を引き込んでいる
前面の道路内にある水道管が市町村の所有管であれば問題ないですが、個人や土地分譲会社が所有している場合には注意が必要です。
個人所有の水道管であっても流れてくる水は市町村が管理してる上水道なので水質は問題ありません。
ただ、水道管の引き直しなどをするためには水道管の所有者の承諾が必要で、その承諾をもらう際に幾らかのお金を要求されたりすることもあります。
前面道路内の水道管が市町村の所有管でない場合には
- 水道管の所有者は誰なのか
- 承諾をもらうために費用が発生するのか
を土地購入前にはっきりさせておくことで余計なトラブルを回避できます。
不動産屋に仲介してもらうメリットと個人間で売買するリスク
仲のいい友人だったり親戚から土地を買ったりするような場合には特にトラブルのないようにしないといけません。
個人間で直接売買をしてしまえば不動産屋に支払う仲介手数料も節約できるメリットがありますが、専門的な調査ができていない状態で土地を購入するのはかなりリスキーな行為です。
土地に建物が建てられないことを購入してから知っても後の祭りです。
不動産屋に間に入ってもらうと仲介手数料がかかりますが、土地購入に関して事前に知っておくべきことは調査してくれますし、重要事項説明でこれから購入する土地がどんな土地なのかを詳しく説明してくれるので圧倒的に安全です。
ただし、不動産屋の営業マンの中にはあまり不動産のことに詳しくない人や他社取り扱いの物件紹介をしているだけで詳細を把握していないなんて人もいるので全てを任せてしまうのではなく、きちんと目を光らせておくことも大切です。
まとめ
土地は「安い=良い土地」ではありません。
安い土地には安いなりの理由があることを覚えておきましょう。
特に次の6つに該当するような場合には慎重に判断する必要があります。
- 境界標がない
- 道路と接していない
- 道路と接している距離が短い
- 接している道路の幅が4m以下しかない
- 給排水管が他人地を跨いでいる
- 個人所有の水道管から水道を引き込んでいる
これらの問題は、よく内容を理解していないと将来的にトラブルに発展する可能性が高いため、個人間での取引は危険です。
いくら値段が安くても絶対に飛びついてはいけません。
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