中古住宅を買うことになって仲介会社から「売主の契約不適合責任は免責ですよ」って言われたんだ。
よくわからないけど「はい、わかりました」ってとりあえず返事をしたけどアレってなんだったんだろう??
人生で一番大きな買い物になるんだから、よくわからないことに軽々しく「わかった」と返事をしてはいけないよ!
不動産取引では特に危険がいっぱいだからね。
今回みたいに売主の契約不適合責任を免責とする特約を承諾してしまうと思いがけない出費に悩まされることになりかねないので要注意だよ!
この記事でわかること!
・売主の契約不適合責任を免責にするリスク
・トラブルを回避する方法
売主の契約不適合責任とは
売主の契約不適合責任とは、引き渡しを受けた対象物が契約内容に沿わないものである時に売主側に責任追及できるものです。
(買主の追完請求権)第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。 (買主の代金減額請求権)第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。一 履行の追完が不能であるとき。二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。 (買主の損害賠償請求及び解除権の行使)第五百六十四条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
法令条文をそのまま見るとかなりややこしい内容です。
居住用で不動産を購入したケースで具体的に考えてみると、
- 知らされていなかった不具合があった場合には修理を請求でき、修理をしてもらえない場合には程度に応じて代金の減額請求ができる。
- さらに損害が発生していた場合には損害賠償請求や契約の解除を求めることもできる。
というようなものです。
これは売主が契約通りの物件(居住するために必要な性能を持った家)を買主へ引き渡しできなかったということで、売主が債務不履行責任を負わされているわけです。
売主の契約不適合責任を免責にする特約の具体的な3つのリスク
売主側はできるだけ引き渡しをした後は「現状有姿での引き渡しだった」と責任を逃れたいので、契約不適合責任を免責とする特約を入れて契約をしたいと考えることが多いです。
もしそうなった場合に買主側にどんなリスクがあるのかを具体的に見ていきます。
- 白蟻や雨漏り被害
- 給湯器設備等の動作不良
- 建物解体時の地中埋設物
1、白蟻や雨漏り被害
建物を内見しただけでは壁の中で発生している白蟻や雨漏り被害まで見つけるのはかなり難しいです。
たとえ売主側から
白蟻被害や雨漏りの被害は今までなかったよ。
と告知を受けていたとしても単純に売主が気付いていなかっただけで、すでに目視できないところで被害が発生していた可能性もあります。
現状有姿での引き渡し、売主の契約不適合責任を免責として契約をしてしまうと引き渡し直後に発覚した被害であっても売主に責任を追及することが非常に難しくなってしまいます。
2、給湯器設備等の動作不良
取引時には売主から給湯器等の住宅設備機器に関して動作状況を教えてもらうことができますが、これは説明直前に動作確認をしたというよりも「売主が使用していた時は使えていた」という意味合いで説明されることが多く、引き渡しを受けて実際に使おうとしたときに全く動かないなんてこともよくあります。
「居住していた5年前には使えていたよ」と言われたところで、今も現役で使えるかどうかなんてわかりません。
建物を構成する一部としてみなされる住宅設備機器は契約不適合責任の対象となりますので、売主が契約不適合責任を負ってくれるのであれば売主に修理請求ができる可能性があります。
(エアコン等の取り外しができる設備機器は対象外とされることが多いです)
売主の契約不適合責任を免責として契約をしてしまうとこれらの修理は全て買主側で負わないといけなくなるので購入後すぐに交換となるとかなり痛い出費になってしまいます。
3、建物解体時の地中埋設物
新築用地として土地を探していると、古家付きの土地というものがあります。
古家付きの土地を気に入った場合には土地建物を購入して引き渡しを受けた後、買主側で建物を解体して新しい家を建てるという流れになります。
物件購入時に建物解体にかかる費用も予算に入れて計画を立てるので通常は問題ありませんが、建物解体時に地中から昔の建物の解体ゴミ(コンクリートの塊や瓦などの産業廃棄物など)や他の敷地からの侵入している給排水管などの想定外のものが見つかることがあります。
これらの場合には数十万円〜数百万円の費用が追加で必要になることもあるので、買主側で負担をするとなるとかなり予定が狂ってしまいます。
売主の契約不適合責任を免責としていた場合には買主側が不利になってしまうので注意が必要です。
トラブルを回避するための方法
不動産は少しの修理でも大きな費用がかかるので
わかった。
買った後の修理は全て買主側ですればいいのか。
と簡単に納得してはいけません。
後々のトラブルを避けるためにもきちんと対策を立てておく必要があります。
- 売主の契約不適合責任を免責にするならリスクに見合った値下げを
- 建物解体費用を売買代金にプラスして更地渡しとして契約
1、売主の契約不適合責任を免責にするならリスクに見合った値下げを
引き渡しを受けた後の修理等の全てを買主側で引き受けるとなると、実際に住めるようになるまでにどれだけの費用が必要になるのかを事前に正確に把握することは難しいです。
購入前にリフォーム見積もりをしていたとしてもまだ売主の所有物である状態で壁紙や壁ボードをめくって中の状況まで確認するわけにもいきませんので、売主側で契約不適合責任を負ってもらえないのであれば買主側で負う可能性のある修理リスクに見合うだけの値下げ交渉をしておくことが大切になります。
値下げ交渉をする値幅が大きくなってしまうと
白蟻や雨漏り被害、住宅設備機器について不備があるかどうかもはっきりしていないのに値引きには応じられないよ。
と売主から言われてしまうこともあります。
その場合には不備がないのかを事前に専門業者に調査してもらい物件の状況に見合った金額で取引をしたいと申し出ましょう。
- 専門的な調査をしてしまうと価値が下がってしまうかもしれない
- 建物の状況を曖昧なままにしてとりあえず売ってしまいたい
なんてことを考えるような売主であれば取引をすること自体を考え直した方がいいかもしれません。
2、建物解体費用を売買代金にプラスして更地渡しとして契約
購入後に建物の解体が必要になるのであれば、地中の状況次第では数百万円単位での追加資金が必要になる可能性があります。
実際に取引時にあったケースでは
- 以前建っていた建物の基礎が出てきた
- コンクリートの塊がいくつも出てきた
- 隣地から伸びた排水管が敷地を横断していた
なんてことがあったよ。
土地建物を購入して買主側で建物を解体するのではなく、例えば元々の物件代金に建物解体費用相当額を上乗せした金額を売買代金として売主側で建物を解体して更地で引き渡すという契約をする方が遥かにリスクは下がります。
この場合には売主もしくは仲介会社側で解体業者を紹介してもらい、解体費用が追加で必要になった場合には
- 増加分を売主側で負担する
- 〇〇万円までは買主側で負担する
等の細かい事項も取り決めをしておくとトラブルも未然に防ぐことができます。
まとめ:売主の契約不適合責任の免責特約はリスクが高い
売主の契約不適合責任を免責とすることは「引き渡しを受けた物件がどんな状態でも後からクレームは言わないよ」という意味です。
売主も買主も知らない=被害がない
ということではないので、契約不適合責任については慎重に考えないといけません。
白蟻被害で床下の木材がスカスカになっていたり、雨漏りで屋根の補修が必要だったりすると住む前にかなりの費用が追加で必要です。
これらはリフォーム工事の時に発見できることが多いので、リフォーム工事に必要な1〜3ヶ月程度の一定期間は売主側で契約不適合責任を負ってもらうことが理想的です。
もしも売主側がどうしても契約不適合責任を負いたくないのであれば事前に心配な箇所を専門業者に調査してもらい、その結果を元に値下げ交渉をするということも必要です。
大きな買い物になるので後悔しない適正価格で購入することが大切で、少しでも購入後の出費リスクは下げるために慎重に判断しましょう。
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